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 生徒が見通しを持って課題解決に取り組み,数学のよさを味わうことのできる数学科の授業を目指して


          瀬戸市立水野中学校数学科

1 はじめに

 本校は,平成10・11年度の2年にわたり,愛日地方教育事務協議会から学習指導の研究委嘱を受けた。そこで,「21世紀をたくましく生き抜く力をはぐくむ学習活動」を主題(副主題 自ら課題を見つけることを通して)とし,研究をスタートさせた。
 これを受け,数学科としてどのような授業を目指していくべきかについて,実践研究を進めることにした。本稿は2年間の数学科の取り組みをまとめたものである。

2 本校の研究について

(1) 目指す生徒像

 本校では,次のような生徒に育ってほしいと考えている。
○ 教科の授業や学級活動,あるいは身の周りの事象の中で,解決すべき課題を自ら見つけることのできる生徒
○ 既習の知識や体験などを基に,粘り強く課題を解決できる生徒
○ 考えや思いなどを積極的に伝えたり聞いたりして,課題を解決できる生徒
○ 自分だけではなく,周りの人たちとお互いに高め合おうとする生徒
○ 学習に対する取り組みを自分自身で評価することのできる生徒

(2) 教科で取り組む内容

 目指す生徒像に迫るために,各教科では次のことを明らかにすることにした。
○ 生徒一人一人が自ら考え,主体となる学習活動とその手だて
○ 自ら課題を見つけることの意味とその手だて
○ お互いのよさを認め合い,共に高め合う学習活動とその手だて

(3) 課題について

 本校では,課題を次のようにとらえている。
 課題とは,「解決すべきことがら」のことである。そして,一つの課題を解決するためには,その下にいくつもの小さな課題があり,小さな課題を解決することによって,大きな課題が解決する。

 大きな課題を「メイン課題」,小さな課題を「ステップ課題」と呼んでいる。


3 数学科の研究内容

(1) 数学科の目指す授業

 数学科では,目指す生徒像に迫るために,次のような授業を目指すことにした。
生徒が見通しを持って課題解決に取り組み,数学のよさを味わうことのできる授業

具体的には以下に述べる通りである。

(2) 生徒一人一人が自ら考え,主体となる学習活動

○ メイン課題を自ら見つけることができる活動

 課題は常に教師が与えるのではなく,どのようなことを解決すべきなのかを生徒に見つけさせるようにする。自分たちで見つけた課題であれば,生徒は解決に向けて意欲的に取り組み,より主体的に学習を進めていく。

○ ステップ課題を自ら見つけることができる活動

 解決に向けての道筋を教師が示すのではなく,生徒に見つけさせるようにする。自らの力で課題を解決できたときの喜びは大きい。このような喜びを味わった生徒は,今後も自ら考え,主体となる学習活動を展開していく。

○ 多様な解決方法が登場する活動

 生徒は個性的であり,一人一人の考えは様々である。したがって,自ら解決方法を考えると,学級全体としては,多様な解決方法が登場する。

○ 解決方法を発表し合う活動

 自分の見つけた解決方法を,自分の言葉や方法で,より分かりやすく表現する。たどたどしい説明でもかまわない。自分の言葉や方法で表現することが大切である。うまく伝わらなければ,周りの生徒に補足させたり,教師が支援したりすればよい。
 より分かりやすい説明をするには,どのように表現したらよいのか,ここでも解決すべき課題を生徒が見つけることができる。

○ 発表された解決方法を検討し合い,よりよい解決方法をまとめていく活動

 よりよい解決方法とは,観点によって様々である。例えば,より素早く解決するならこの方法,時間はかかるかもしれないが,より確実に解決するならこの方法,他の問題にも応用するならこの方法,といったように様々である。このように,それぞれの解決方法にはよさがあり,それをお互いに認め合うことによって満足感が得られ,学習意欲も高まる。ただし,「それぞれいいね」だけで終わってしまうのではなく,より素早く,あるいはより応用が利く,というよさを押さえておく必要がある。
 ここでの活動を通して,生徒はお互いのよさに気づくとともに,数学の簡潔さ,美しさ,便利さなどといった数学のよさを味わうことができる。

(3) 数学科の授業における「自ら課題を見つける」とは

○ メイン課題

 メイン課題を見つけるとは,生徒が「解決してみたい」「解決する必要がありそうだ」「あれ,どうしてだろう」といった思いや疑問を持つことである。
【メイン課題を見つけさせるための手だて】

@ 条件変えを行う。
(例)
 1点から等しい距離にある点の集まりは円になることを学習した後,2点から等しい距離にある点の集まりは垂直二等分線になることを扱う。そして,次は何を考えたらよいかを発問し,3点から等しい距離にある点の集まりについて考える必要性を感じさせる。次に4点についても同様に扱い,この後は同じように考えればよいことに気づかせる。点から等しい距離にある点の集まりについて考えたので,今度は直線から等しい距離にある点の集まりについて考える必要性を感じさせ,解決していく。

A 数学的に不思議な事象を提示する。
(例)
 コンピュータ画面の中で,四角形の4辺の中点を結んで,四角形の中に四角形を作る。そして,外の四角形をいろいろ動かし,中の四角形を観察させる。これによって,生徒は中の四角形がいつも平行四辺形になることや,正方形,ひし形,長方形になる場合もあることなどに気づき,「なぜだろう」「他の四角形になる場合はないだろうか」といった疑問を持つ。

(例)
 円周上に点をいくつかとって線分で結び,様々な場所の角の大きさを測定させる。そして,そこから気づくことを基に,解決してみたいことを挙げさせ,これらを解決していくことを通して,円周角の定理や接弦定理,円に内接する四角形の性質に迫っていく。

○ ステップ課題

 ステップ課題を見つけるとは,メイン課題を解決するために,解決しなければならないことは何なのか,解決の見通しが持てることである。

【ステップ課題を見つけさせるための手だて】

@ 課題を見つけやすい問題の工夫
(例)
 直線m(ax+by=c)と直線n(dx+ey=f)はx軸上で交わるだろうか,という課題を解決させる。この場合,生徒は解決のための,次のような見通しを持つ。
・ 実際にかいてみることが必要だ。
・ mとnの交点の座標を求めることが必要だ。
・ mとx軸との交点,nとx軸との交点の座標を求めることが必要だ。

A 課題提示の順序と発問の工夫
(例)
 連立方程式を加減法で解く方法を明らかにするとき,まずはじめに,連立方程式の2式をそのまま加減すればよい課題を提示する。次に,一方を何倍かする必要のある課題を提示し,「先の問題との違いは何か」「先の方法だと困ることは何か」を発問し,このまま加減しても文字が消去されないことに気づかせる。そして,このことを何とか解決してみようという気持ちを持たせる。

○ その他の課題

 単元の終了時,あるいは学習内容のまとまりのある単元の適当な時期に,その単元のこれまでの学習について感想を書かせる。これは自己評価をすることになるのだが,自分の学習を振り返らせることによって,自分の足りない点やもっとやらねばならない点,さらに学習してみたい点などが明らかになる。これらは,子どもたち一人一人の課題といえる。
(例)
 「自分は計算が速くできないので,もっと練習したい」「加減法と代入法を学習したが,どちらの方法を使えばよいのか,問題を見ただけですぐに判断できるようになりたい」

(4) 数学科の授業における「お互いのよさを認め合い,共に高め合う学習活動」について

○ 数学科の授業における「お互いのよさ」とは

・ 問題解決の方法
 確実さ,応用の幅広さなどのように,観点によって様々である。

・ 問題解決の方向性
 たとえ解決に至らなくても,その方向性はよい場合がある。例えば,「数直線を使えばよさそうだ」「表を作ってみよう」等

・ 説明のための表現
 「図を使って視覚に訴える」「キーワードを使ってうまくまとめる」「筋道立てて説明する」「文字を使って一般的に説明する」等

○ 数学科の授業における「共に高め合う学習活動」とは
 生徒同士で相談したり学級全体で話し合ったりして,自分の気づかなかった解決方法や表現方法を知ったり,新たな解決方法や表現方法を見つけたりする学習活動。また,今後,同じような問題を解決したり,解決方法などを説明したりする必要が生じたときに,使ってみようという思いを生徒が持てるような学習活動である。

(5) 実践例

<3年 課題学習「平面分割」の実践>

 はじめに1直線で平面はいくつに分割されるかを解決し,次に2直線,3直線と,1本ずつ直線を増やしていった。このとき,教師から「2直線について調べよう」「次は3直線」と指示を出すのではなく,「次は?」と言いながら,調べる直線の数を生徒に意識させるようにした。
 3直線について調べた結果は,次の図の通りである。
     4つ       6つ       6つ      7つ
 これらが正しいことを確認した後,3直線の位置関係を言葉で表現させた。「平行」「交わる」「交点」という言葉を使って,生徒はそれぞれの位置関係を分かりやすく表現した。
 特に,「交点の数が0個」「交点の数が1個」「交点の数が2個」「交点の数が3個」といった表現は,位置関係をすっきりと分類でき,着眼点のよさに,どの生徒も感心していた。そこで,交点の数と,分けられる平面の数の関係について,気づくことを挙げさせた。生徒は次頁のアからオに気づくことができた。  
ア 交点が1個の場合以外は,平面の数=交点の数+4
イ 交点が0個の場合は,平面の数=直線の数+1
ウ 交点が1個の場合以外は,平面の数=交点の数+直線の数+1
エ 交点の数が多いほど平面の数は少なくない。
オ 交点の数が少ないほど平面の数は多くない。
 イやウは,3直線以 外の本数まで視野に入れた発言であるので,その正しさを直線が,1本,2本の場合で確認した。なお,エ,オについては,「多いほど多い」「少ないほど少ない」と,表現したいところだが,交点の数が異なっても分けられる平面の数が同じ場合があるので,このような表現を工夫したのである。正確な表現を心がけた点を,大いに賞賛した。
 ここまで学習を進めた後,「さらに自分で調べてみたいことを決めよう」と投げかけた。つまり,生徒に課題を見つけさせようとしたのである。生徒からは,「4直線で分けられる平面の数」「交点が1個の場合,いくつの平面に分けられるかをいろいろな直線の本数で調べる」といった課題が挙げられた。自分で課題を見つけられない生徒もいたので,これらを紹介し,参考にさせた。その後,生徒は自分の課題を解決し,お互いに発表し合いながら成果を共有していった。
 単元終了後,「単元を振り返って」というプリントに,感想や疑問点などを書かせた。記述の中には,「すごいなあ」「おもしろかった」「驚いた」といったものが多く見られ,数学のおもしろさを味わった様子がうかがわれた。また,「これからもいろいろ調べてみたい」「法則のようなものが存在するのか知りたい」といったように,さらに自分で課題を見つけた生徒もいた。
        
「単元を振り返って」より
 はじめはこんな簡単なこと,と思っていたけど,やってみると意外に難しかった。交点と平面の数にいろいろな関係があったことなんて全然知らなかった。直線の数を増やしていって,式が合うかどうかやってみて,合わなかったものがあったときは,なぜだろうと思った。意外に奥が深いことに驚いた。

<2年 「一次関数」の実践>

 本時では,一次関数の導入として,1辺の長さが1pの正方形を1段,2段,3段,4段・・  とピラミッド状に積み上げていく図形を使い,段数を増やしていくとそれにともなって変わる
 
  1段          2段                  3段

数量を見つけさせる。そして,それがどのような規則で変わっていくか,変化の様子を考えさせることによって既習の関数とそうでない関数に区別し新しく見つけた関数を調べていこうとする意欲を持たせることをねらいとした。
 まず最初に,段数を増やしていくとそれにともなって変わる数量を考えさせた。生徒は興味を持ち,周りの生徒と相談するなどして,意欲的に取り組んだ。そして下のようなものを見つけることができた。
・ 面積  ・ 周りの長さ  ・ 図形の高さ  ・ 頂点の数 
・ 辺の数 ・ 正方形の数   ・ 図形の幅
 次に50段目のそれぞれの値を求めさせることのよって,変わり方の規則を考えさせた。
 

 図形の高さについては「何だ簡単じゃないか」と言っていた生徒も,面積・横幅の長さ・頂点の数を求めるところになって「どうすればいいの」「わからない」という声が出た。それに対して「面積は一番下の段の出っ張っている正方形を上に持っていくと大きな正方形になるよ」とか「表をかいて段数を1ずつ増やしていくと横幅の長さは2ずつ,頂点の数は4ずつ増えていくよ」という生徒があり,「そうか,それじゃ計算ででるんだ。計算方法を探そう」と次への意欲へつながる声が出た。50段目の値を求めた後,「では,次はどうしようかな」と投げかけた。「100段目を求めよう」とか「1000段目を求めよう」の他に「関数だから文字を使うのかな」といった発言があり,「それではX段目はどうなるだろうか」と問いかけた。50段目を求める計算方法をもとに,多くの生徒がXを使った式で表すことができた。一次関数では「増え方が同じで正比例みたいなのに式が少し変」といった声や,二次関数には「何これ」という驚きの声も聞かれ,新しい関数に興味を覚えたようであった。授業終了後,プリントに感想を書かせた。
 「グラフを正しくかきたい」「一次関数を完璧に」といった記述があり,自分なりにこの単元の課題を見つけた生徒が多くいた。また,「規則があるととてもわかりやすい」「方程式よりおもしろそう」など意欲の感じられる感想を書く生徒もいた。
                          生徒の感想
 頭をやわらかくして考えたのでつかれた。でも規則が見つかると,とてもわかりやすかった。
関数は苦手だけれど,グラフや式を早くかけるようになりたい。

<1年 「変化と対応」の実践>

 本時は「変化と対応」の第1時で,単元
 1段        2段            3段               4段
の導入として1辺が1cmの正方形のカード1枚の場合を1段とし各段を1枚ずつ増やしながら2段,3段と順に増やしていくとき,段数が変わるとそれに伴って他にどんな数量が変わるのかを考えさせた。
 最初は,「正方形の数」や「面積」などに気づく生徒がほとんどだったが,生徒が数量の変化をより深く考えることができ,さらに多くの意見が出されるよう教師からの助言も与え,次のようなものを見つけることができた。

・ 正方形の数  ・ 面積  ・ 縦の長さ  ・ 横の長さ  ・ 周りの長さ
・ 頂点の数  ・ 辺の数  ・ 対角線の長さ  ・ 一番下の段の正方形の数
・ 頂点の角度の合計



 次に,見つけたものについて「変わり方が似ているものはないだろうか」と発問し,予想をさせた。そして,変わり方を表やグラフを利用して具体的に生徒たちは調べた。変化する数量の値が見つけやすいものから順に生徒たちは調べ,中には値が見つけにくいものを積極的に調べようとする生徒や,すべてのものを分類しようと調べる意欲的な生徒もいた。
 授業の終わりに「数学日記」のプリントに感想や疑問,あるいは今度の授業でやってみたいことなどを書かせた。段数を変えていくのに伴って他にも多くのものが変わっていることに興味を持ったと思われる感想が多く,単元の第1時としては,導入の問題に時間をかけたことで,伴って変わる2つの数量の関係に関心を持たせることができたのではないかと思う。

               生徒の感想

 段数が変わるというだけの図なのに,他にもたくさんのものが変わっていることが分かっておもしろかった。もっと考えてみれば,
他にもたくさんのものが変わっていると思うので調べてみたい。

(6) 成果と今後の課題

○ 成果

 次のような手だて及び教師の支援が明らかになった。

ア 生徒が「自ら課題を見つける」ための手だてや支援

・ 数学的に不思議な事象を提示したり条件変えを行わせたりする。
・ 本時の学習の前に,同様な学習の流れを経験させておく。
・ 学習を振り返らせる。

イ 生徒が「お互いのよさを認め合い,共に高め合う」ための教師の支援

・ 解決方法を発表させ,そのよさを明らかにする助言や発問をする。
・ 友達と相談する場を設定する。
・ 既習内容を使う機会を作ったり既習内容をうまく使えたことを指摘したりする。

ウ 生徒が学習を振り返るための手だてや支援

・ 用紙「学習を振り返って」に記入させる。
・ 板書等を使って,学習の成果を実感させたり学習の仕方に気づかせたりする。

 また,研究実践を通して,生徒には次のような姿が見られるようになってきた。

ア 一つの解決方法で課題が解決したら,他の方法を考えようとする。

イ 友達の考えを賞賛し,それを自分に取り入れようとする。

ウ 一つの課題が解決したら,次は何を解決すべきかを自ら進んで考えようとする。

○ 今後の課題

ア 課題を見つけさせるためのさらなる教材を開発する。

イ 課題を見つけられない生徒への支援のあり方を工夫する。

ウ 生徒一人一人の課題への対応の仕方を工夫する。

4 おわりに

 研究委嘱をきっかけに,数学科として目指す授業を明確にし,実践を通して具体的な手だてを検証してきた。その結果,目指す授業を実現するための手だてや支援の仕方が明らかになった。また,生徒の変容も見られ,手応えも感じている。委嘱期間は終わったが,今後も継続,発展させていきたい。

参考図書:愛知教育大学附属名古屋中学校数学科カリキュラム





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